2025/12/24

【コラム#3】サステナブル(持続可能な)調達とは?~中堅・中小企業が今、備えるべきこと~

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サステナブル調達
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近年、取引先からサステナビリティに関するガイドラインや質問票が送られてきたというケースが増えています。内容を確認すると、環境、人権、労働、安全衛生、倫理といった多岐にわたる項目が並び、従来の品質・コスト・納期(QCD)では対応しきれない領域まで求められていることに気付かされます。こうした依頼は中堅・中小企業にも確実に広がっており、対応の有無が取引継続や評価に影響する場面も増えつつあります。
本コラムでは、サステナブル調達とは何か、なぜ今それが中堅・中小企業にとって重要なのか、そして要求が高まる中でどのように対応を進めていくべきかを整理します。

目次INDEX
目次INDEX
1. サステナブル(持続可能な)調達とは
1.1 CSR調達やグリーン調達との違い
1.2 持続可能な調達の国際ガイドライン規格「ISO 20400」
2. サステナブル調達の重要性が高まる背景
2.1 国際的な規制強化
2.2 投資家や消費者の意識
3. 中堅・中小企業に求められていること
3.1 方針の策定から運用まで
3.2 サプライヤーモニタリングの実践例
3.3 第三者評価・監査への対応
4. SAQ(自己評価質問票)への対応方法
4.1 SAQ(Self-Assessment Questionnaire)への理解
5. まとめ
1.サステナブル(持続可能な)調達とは
1.1 CSR調達やグリーン調達との違い

サステナブル調達は、環境・人権・労働・倫理といった社会的課題に配慮しながら、調達活動を通じて持続可能なサプライチェーンを構築する考え方です。

単なる法令順守や環境負荷低減にとどまらず、企業全体のリスク管理や企業価値の向上につながる取り組みとして位置付けられています。

従来のCSR調達は、「企業の社会的責任を果たす」という観点が強く、グリーン調達は環境側面に焦点を当てたものでした。

これに対し、サステナブル調達はESGというより広い視点から、環境・社会・ガバナンスを包括的に扱う点に特徴があります。

1.2 持続可能な調達の国際ガイドライン規格「ISO 20400」

多くのグローバル企業や大企業は自社の「サステナブル調達ガイドライン」を整備し、サプライヤーに準拠を求めています。その基礎となるのが「ISO 20400(持続可能な調達に関するガイダンス)」です。

これは企業行動規範の指針である「ISO 26000(社会的責任の手引き)」を補完するもので、持続可能な調達の実践に向けた考え方やプロセスが整理されています(表1)。

2.サステナブル調達の重要性が高まる背景
2.1 国際的な規制強化

国際的な規制強化はその大きな理由の一つです。

欧州で議論が進むサステナビリティ情報開示や、人権・環境デュー・ディリジェンスの義務化(※1)などを受け、多くの企業がサプライチェーン全体の状況を把握し、適切に管理することを求められています。自社だけで全てを完結させることは難しく、調達先の取り組み状況を確認する必要が高まっています。

引用強調

※1:企業サステナビリティ報告指令(CSRD)
EUが企業に求めるESG情報開示を大幅に強化する指令で、サプライチェーンを含む環境・社会リスクの把握と説明が義務付けられます。ESRS(欧州サステナビリティ報告基準)に沿って「ダブル・マテリアリティ」の視点で詳細な報告を行う必要があり、EU域外の企業でも一定規模のEU事業を有する場合は対象となります。

企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)
企業に対し、自社とサプライチェーン全体における人権・環境リスクの特定、予防、改善を法的義務として求める指令です。自主的な取り組みではなく、実効性のあるデュー・ディリジェンスの実施と開示が要求され、EU域外企業も条件を満たせば適用されます。

2.2 投資家や消費者の意識

さらに、投資家が企業のESG対応を重視するようになったこと、また消費者が製品・サービスの背景に関心を持つようになっていることも、サステナブル調達が拡大している背景です。

これにより企業は、価格や品質だけでなく、リスクや透明性を含めた総合的な視点でサプライヤーを評価するようになりました。

3.中堅・中小企業に求められていること
3.1 方針の策定から運用まで

企業が発行するサステナブル調達ガイドラインでは、人権方針や腐敗防止方針の策定、安全衛生管理体制、化学物質管理の仕組みなど、一定の取り組み水準を満たすことが前提とされています。こうした要求は、単に方針や規程を整備すればよいというものではなく、それらが実際の業務の中で適切に運用されているかどうかが重視される傾向にあります。

そのため、文書の有無だけでなく、管理体制や教育、記録の整備など、日常的な運用の実態が問われる点に留意する必要があります。

3.2 サプライヤーモニタリングの実践例

サステナブル調達の運用段階において重要となるのが、調達方針や要求事項がサプライチェーン上で適切に実行されているかを継続的に確認する「サプライヤーモニタリング」です。近年では、大手企業を中心に、調達先との対話や確認を通じて実効性を高める取り組みが進められています。

例えば、KDDIでは、サプライヤー行動規範を定めたうえで、自己評価アンケートやリスク評価(EcoVadisの活用等)を通じてサプライヤーの状況を把握し、必要に応じて改善要請やフォローアップを行っています。単なる一律の確認にとどまらず、リスクの高い領域については重点的な確認を行うなど、段階的なモニタリングを実施している点が特徴です。

また、日清食品グループでは、持続可能な調達方針に基づき、サプライヤーとの継続的なコミュニケーションを重視しています。調達における環境配慮や人権尊重の考え方を共有したうえで、必要に応じて状況確認や是正対応を行い、サプライチェーン全体の持続可能性向上を図っています。

これらの事例を踏まえると、取引先から求められている確認事項や開示内容を整理したうえで、対応可能な項目から段階的に整備していくことが重要です。

3.3 第三者評価・監査への対応

近年は、サプライチェーン管理の手段として、第三者評価や監査を活用する企業も増えています。代表的な仕組みとしてはSedex、RBA、EcoVadisがあり、それぞれ対象とする業界や評価方法に特徴があります(表2)。これらの評価は、サプライチェーン全体の水準を可視化する手段として、日本国内でも広く利用されており、調達先に対する要求として提示されるケースも少なくありません。

4.SAQ(自己評価質問票)への対応方法

(1)サステナブル調達ガイドラインや第三者評価・監査の多くは、SAQ(Self-Assessment Questionnaire)による自己評価から始まります。

対応の第一歩は、自社の現状を丁寧に把握することです。既に実施している取り組みや保有文書を整理することで、不足している項目を明確にすることができます。

(2)次に、求められる基準と自社の現状とのギャップを確認し、改善の優先順位を設定します。

人権方針や倫理規程の整備が必要な場合もあれば、体制はあるものの記録や教育の仕組みが不十分なケースもあります。

(3)改善計画を策定した後は、仕組みの実装と継続的な運用が重要です。

評価は一度回答すれば終わりではなく、継続して改善に取り組む姿勢が取引先からの信頼につながります。

5.まとめ

サステナブル調達ガイドラインへの対応は、当初は一定の工数を要します。しかし、適切な取り組みは企業リスクの低減につながるだけでなく、取引先からの信頼確保や新たな商機の獲得にも寄与します。働きやすい職場づくりや内部管理の強化にも波及するため、中長期的な企業価値の向上に資する取り組みと考えられます。

SAQや第三者評価・監査対応でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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出典元

・日本科学技術連盟 ISO審査登録センター ISO20400

・日本貿易振興機構(JETRO)ビジネス短信(2025年12月16日)

・KDDI株式会社 サプライヤーモニタリング

・日清食品グループ 持続可能な調達

・Sedex ホームページ

・RBA ホームページ

・EcoVadis ホームページ

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